四
新幹線で、松原林との会話を開き、一番上まで巻き戻しゆっくりと読み始めた。
七海遙は松原林と出会うまでにこのアプりを使ったことがなく、松原林が転校してきてから無理やりダウンロードをされた。
七海遙は携帯番号があればいいじゃんと言ったが、松原林から全然違うと言われた。
初めて松原林の挨拶スタンプを見て、七海遙は思わず小さく笑った。これは確かに違う。
彼らの関係が初めて進展したのは六月末だ。二人で一緒に登下校するので、隣のお弁当屋さんのおばさんも松原林のことを知った。松岡林はお喋り上手で、おばさんは喜んで時々松原林に手作りの菓子をあげた。
ある日、一人暮らしをしていた松原林は、自分で料理をするのがだるくなりお昼におばさんの店でステーキ弁当を買いに行って、おばさんから七海遙の誕生日を教えられた。
数年前に七海遙の両親が地方の工場で働き始めてから彼は誕生日を過ごしたことがない。毎年誕生日におばさんがそばを作ってくれるが、家族や友達が一緒にいる誕生日の方が良いに決まっている。
「あさってのはるの誕生日、一緒に過ごさない?」
このメッセージを受け取った時、水道が止まっていたので、七海遙は厚い請求書を持ってコンビニで料金を払っていた。電力会社の人に電話して状況を説明しなければならないと思ってイライラしていた。
彼が携帯を開けると、まず目に入ったのが松原林のメッセージで、もともと眉をひそめて急ぎ足でコンビニを出てきた少年が急にドアの前で止まった。
彼はもう一度よくそのメッセージを読んで、確かに自分の誕生日があさってだったことを思い出したが、以前はどのように誕生日を過ごしたのか思い出せなかった。
携帯を抱えて戸惑い、少しの期待と恥ずかしさで胸がいっぱいだった。蝉が奏楽を始め、彼は空を見上げ、初夏のうららかな日差しが目に直射して、思わず目を閉じてくしゃみをした。
ある日の授業で松原林が大きなくしゃみをしたことを思い出した。周囲の同級生は低い声で笑っていたが、「なんだよ、くしゃみをするということは、誰かが今俺のことを考えているということなんだぞ」と彼は堂々と言った。
その誕生日は楽しくすごした。おばさんはわざわざ豪華なお弁当を作ってくれて、その上にソースで「お誕生日おめでとう」を絞った。松原林もケーキを買ってバースデーソングを歌ってくれたが、何でも上手でロマンチックな松原林が音痴であることが意外だった。
甘いものはあまり好きではなかったが、ケーキを全部食べてしまった。
また、林に言われ願い事もした。遠くにいる両親の無事を祈り、プールの先生の健康を祈り、隣のおばさんの店の繁盛を祈り、目の前の少年が永遠に輝くことを祈った。
チャットの記録を見終わった時、新幹線も到着した。七海遙はすぐに乗り換えて家に帰り、途中で松原林にメッセージを送ったが、ずっと「未読」を示していた。
彼が急いで家に着いたとき、松原林はもう出ていた。
この事は隣のおばさんから聞いた。
昨夜松原林が会いに来て、おばさんは七海遙が数日後に帰ってくると教えたが、松原林は知っていると言って、彼の家の前に座って待ってた。夜が明けたら,車が彼を迎えに来て、彼はやっと出て行った。
おばさんはどこに行くのと聞いて、松原林は「オーストラリア」と言って車に乗ってその場を離れた。
「オーストラリアってあのオーストラリア?」
「うん。」
「あの子は海外に行くの?」
「うん。」
おばさんはその後また何か言った気がするが、よく聞こえなかった。直ちに空港に松原林を見送りに行こうとしたが、路線を調べたら、国際空港は遠くにある泉佐野市の人工島にあったことが分かった。
彼は松原林が何時に出発するどのフライトなのか、オーストラリアのどこに行くのかさえ全然知らなかった。
ドアを開けようとしたとき、取っ手には琥珀の鈴がかかっていて、「本覚寺」の三文字が刻まれていて、つぼみを含んだ桜が包まれていた。
突然、七海遙は、松原林の言葉がたくさん聞こえて、たくさんの約束を思い出した。
彼らの初めての出会いはわずか十一ヶ月前で、初めて知り合ったのは7ヶ月前だったことも思い出した。
彼は今14歳で、この年の記憶は彼でいっぱいになった。
しかし彼の記憶を占拠した男は、あっさり消えてしまった。
その夜、また松原林のメッセージを待っていた七海遙は、一日疲れて寝落ちた。
夢の中で彼がよく知っているあの姿は彼の家の前に寄りかかっていて、遠くないところで色とりどりの花火が咲いて消えているのを見えたが、彼と一緒に花火を見るはずだった人は結局現れなかった。
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